120年ぶりに民法が改正され、2020年4月に施行されました。民法改正では、これまで商習慣で法律上規定されていなかった敷金の定義や返還時期、曖昧でトラブルも多かった原状回復義務の範囲が明確化されています。他には、連帯保証人の保証限度額や瑕疵担保責任などが改められました。
ここでは、民法改正によって明確化された敷金の定義や返還時期、原状回復義務の範囲について解説します。賃貸住宅オーナーの方は、改正内容を把握しておきましょう。
1.敷金の定義・返還時期
これまで敷金の定義は法律上ありませんでした。しかし、民法改正によって、敷金の定義と返還時期が明確化されています。
以下は、改正民法第622条の2に記された敷金の定義です。
“いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう”
つまり、敷金は家賃などを担保するもので、借主が滞納した場合に弁済に充てられます。弁済に充当し、敷金が残った場合は借主に返還しなくてはいけません。また「保証金」という名目で敷金と同じような性質のお金を受けとっている場合も同様の扱いです。
敷金の返還時期は、賃貸借契約が終了して物件を明け渡した時です。
このように、民法改正により、敷金の定義は家賃などの担保、契約終了後で返還時期は物件を明け渡した時と明確化されました。
2.原状回復義務の範囲が明確化
民法改正によって原状回復義務の範囲が明確化されました。改正民法 第621条には以下のように明示されています。
“賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない”
つまり、
・通常の使用によって生じた物件の損耗
・物件の経年変化
上記に関しては、借主は回復義務を負わないということです。たとえば、壁や畳の日焼けなどは原状回復義務は負う必要はありません。原状回復義務の範囲が明確化されたことで、借主・貸主どちらも責任の線引きがしやすくなり、退去時のトラブル回避につながります。このように、賃貸住宅オーナーは敷金を家賃などの担保として預かり、通常使用の物件損耗や経年変化は借主の回復範囲内でないなため、オーナーはこれらを修繕する目的で敷金を使用していはいけないということです。
まとめ
今回の民法改正により、これまで商習慣として法律上の規定がなかった敷金は家賃などを担保するものと定義され、賃貸借契約が終了して物件を明け渡した時に返還をするものと明確化されました。また、通常の使用によって生じた物件の損耗や経年変化による物件の傷みなどは借主が原状回復をする必要はありません。賃貸住宅オーナーは、これらの敷金の定義・返還時期と原状回復義務の範囲をしっかりと押さえておく必要があります。また、今回の民法改正では連帯保証人の保証限度額や情報提供、瑕疵担保責任などについても改められています。これらの内容に関しても、あわせて押さえておきましょう。